結論から申し上げます。亡くなった親御さまのスマートフォンに残っている決済残高やポイントは、ひとまとめに「故人の財産」と決めつけず、サービスごとに扱いが違う前提で、一つずつ確認していくのが安全な進め方です。相続の対象として引き継げるもの、名義人が亡くなった時点で失効するもの、払い戻しの窓口が用意されているもの、扱いは本当にばらばらです。そして、相続放棄を少しでもお考えなら、残高を使う・誰かに送金する・ポイントを別の名義へ移す前に、必ず司法書士や弁護士へご確認ください。先に動いてしまうと、後から取り返しがつかなくなることがあります。
大阪市旭区で葬儀のお手伝いをしておりますと、初七日を過ぎたころ、あるいは四十九日が近づいたころに「スマホの中のお金って、どうなるんでしょうか」というご相談をいただきます。通帳やカードと違って残高が目に見えないぶん、金額の大小にかかわらず不安だけが残ってしまうのですね。ここでは、確認の順番と、迷ったときの見極め方を整理しておきます。
目次
まず「何が入っているのか」を洗い出す
いきなり解約から入ると、あとで「あれはどうなったのか」が分からなくなります。最初にやっていただきたいのは、解約ではなく棚卸しです。ホーム画面のアプリ、通知欄、届いているメール、そして紙の明細を突き合わせて、どの種類のものが動いていたかを書き出します。おおまかには次のように分かれます。
- スマホ決済アプリ(コード決済)…チャージ残高、送金でやりとりできる残高、アプリ内のポイントが混在していることが多い区分です。
- 電子マネー…カード型とアプリ型があり、同じ名前でも発行体や規約が違う場合があります。
- 交通系ICカード…定期券部分と電子マネー部分で扱いが分かれ、駅の窓口が受付になることがあります。
- キャリア決済…携帯電話の利用料金と一緒に請求される仕組みで、通信契約そのものと連動します。
- アプリ内残高・ゲーム内通貨…そのサービスの中でしか使えず、譲渡や引き継ぎが規約で禁じられていることが少なくありません。
- ポイント…共通ポイント、通販サイトのポイント、店舗の会員ポイントで、それぞれ規約が異なります。
この段階では金額が分からなくても構いません。「この種類が動いていた」という一覧さえあれば、後の確認がぐっと楽になります。全体の流れは葬儀後の手続きのページも合わせてご覧ください。
「相続できるのか」はサービスごとに違う
よくいただくのが「ポイントや電子マネーは相続できるのですか」というご質問です。ここは一律にお答えできないところで、実務上は次のように分かれる、とお考えいただくのが実態に近いと思います。
- 所定の手続きで相続人が払い戻しを受けられるものがあります。残高の性質によって窓口も必要書類も変わります。
- 規約上、名義人の死亡によって失効するとされているものがあります。ポイント類はこの扱いが比較的多く見られます。
- 一定の条件で家族への引き継ぎが用意されているものもあります。会員種別や申請期限が決まっている場合があります。
- そもそも個別の判断になるものもあり、事業者へ問い合わせて初めて扱いが分かることも珍しくありません。
ですから、あるサービスで払い戻しができたからといって、別のサービスでも同じとは限りません。逆に、ひとつが失効だったからと諦めて、受け取れたはずの残高をそのままにしてしまう、ということも起こります。面倒に感じられるかもしれませんが、一件ずつ、そのサービスの窓口に確認するのが結局は近道です。
「勝手に使っていいのか怖い」というご不安について
これは、とても真っ当な感覚だと思います。故人名義の残高は、原則としてご家族の自由になるお金ではありません。特に注意していただきたいのが、相続放棄を検討されている場合です。故人の残高を使う、送金する、ポイントを自分の口座やアカウントへ移す、といった行為が、相続財産の処分と受け取られる可能性があります。そうなると放棄が認められなくなるおそれがあり、借入や連帯保証が残っていた場面では影響が小さくありません。
金額の大小の問題ではなく、順番の問題です。相続放棄の可能性が少しでもあるなら、残高には手をつけず、まず司法書士や弁護士へご相談ください。支払いや解約との関係は相続放棄と支払い・解約で整理しています。あわせて銀行口座の凍結のページもご確認いただくと、お金まわり全体の流れがつかめると思います。
暗証番号やロックが分からないときは
「そもそも画面が開けない」というご相談も多くいただきます。無理に何度も入力すると、初期化や長時間のロックにつながることがありますので、闇雲に試すのはお控えください。通信会社の窓口で相談できる範囲、事業者の遺族向け窓口で対応してもらえる範囲がありますので、開けないまま相談するほうが結果的に前へ進みます。手順はスマホロック・二段階認証にまとめました。
二段階認証の確認用の番号が故人の電話番号に届く設定になっていると、回線を解約した後では確認が取れなくなります。回線の解約は、中の確認が一通り終わってからという順番をおすすめしています。回線側の進め方は死亡後のスマホ解約とSNS整理をご覧ください。
「解約すると履歴が見られなくなるのでは」への備え
これも実際に起こります。解約や退会をした時点でアプリの中の履歴が閲覧できなくなり、いつ何に使っていたかを後から追えなくなる、というものです。相続の話し合いや申告の場面で「その支払いは何だったのか」が必要になることもありますから、解約する前に、残高と直近の利用履歴を画面の記録や書面で残しておくことをおすすめします。
特にキャリア決済や継続課金は、通信契約やカード請求と一体で動いています。何が毎月引き落とされていたかは、カードの明細から追うのがいちばん確実です。クレジットカード明細と継続支払いとサブスク解約を突き合わせると、止め忘れが見つかりやすくなります。カードそのものの手続きは死亡後のクレジットカード手続きをご参照ください。
進める順番の目安
迷われたときは、この順序で考えていただくと整理しやすいと思います。
- まず洗い出し。解約より先に、何が動いていたかの一覧をつくる。
- 次に記録。残高と直近の履歴を、消える前に残しておく。
- 相続放棄の可能性があるなら、ここで一度止めて専門家へ。
- 止まっていない継続支払いを優先。放置すると請求が積み上がります。
- 払い戻しや引き継ぎの期限があるものを確認し、最後に回線やアカウントの解約へ。
アカウントの整理では、思い出の写真やメッセージをどうするかという別の悩みも出てきます。急いで消してしまって後悔された方もいらっしゃいますので、故人SNS追悼・削除もあわせてご覧いただければと思います。
大阪市旭区で、ご葬儀のあとに迷われたら
大宮、生江、清水といった旭区の地域では、ご葬儀を終えてしばらくしてから「これはどこに聞けばいいのか」とお電話をいただくことがよくあります。スマートフォンの中の残高は、金額そのものより、触っていいのか分からない不安のほうがご負担になりがちです。私どもは法律や税の判断を代わりに行うことはできませんが、どの順番で進めればよいか、どこへ相談すればよいかの交通整理はお手伝いできます。
各サービスの規約、相続の可否、税務の取り扱いについては、それぞれの事業者と、司法書士、弁護士、税理士といった専門家へのご確認をお願いいたします。そのうえで、進め方に迷われたときは事前相談・お問い合わせからお声がけください。一つずつ順番に片づけていけば、必ず先が見えてきます。