結論から先にお伝えします。相続放棄を考えている段階でも、死亡届の提出、火葬、ご遺体の搬送や安置といった「お見送りのために避けて通れない手続き」は、進めていただいて差し支えないことがほとんどです。一方で、故人名義の預貯金を動かす、車や家財を売る・処分する、故人のお金で未払いの請求を払うといった「故人の財産に手をつける行為」は、いったん立ち止まって確認してからでも遅くありません。この線引きが、迷った時のいちばん大きな判断基準になります。
大阪市旭区・関目高殿・森小路・千林の周辺でお手伝いをしていると、「解約の電話をしてしまったら、もう相続放棄できないのでしょうか」「督促状が届いたので払ってしまってよいですか」と、葬儀の翌日からご相談をいただくことがあります。ご家族にしてみれば、カード会社も携帯会社も管理会社も、それぞれが別々に期限を切って連絡してくるわけですから、混乱されて当然です。この記事では、葬儀社の立場から、急いでよいこと・待った方がよいこと・専門家へ確認した方がよいことを交通整理します。法律上の最終判断は司法書士や弁護士にご確認いただく前提で、まずは頭の中を整理する材料としてお読みください。
目次
相続放棄を考えている時に最初に分けること
「お見送りの手続き」と「財産の手続き」は別のもの
亡くなった後の手続きは、ご家族の目には一続きの作業に見えます。しかし性質はまったく違います。まず、ここを頭の中で二つに分けてください。
- お見送りに伴う手続き……死亡診断書の受け取り、死亡届の提出、火葬許可、ご遺体の搬送と安置、通夜・葬儀、菩提寺やご親族への連絡
- 故人の財産に関わる手続き……預貯金の払戻しや解約、不動産や自動車の名義変更、故人の借入やカード残債の支払い、家財や遺品の処分・売却
前者は、亡くなったという事実に伴って必要になるもので、誰かが必ず行わなければならない手続きです。後者は、故人の残したものをどう扱うかという話であり、相続放棄をするかどうかの判断と直接つながります。どちらを今やろうとしているのかを毎回確認するだけで、迷いはかなり減ります。亡くなった直後に誰へ何を連絡するかという全体像については、大阪市旭区で親が亡くなった直後に誰へ連絡するかをまとめた記事もあわせてご覧ください。
期限は「知った時から3か月」
裁判所の説明では、相続放棄をするには家庭裁判所への申述が必要で、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に行う必要があるとされています。この「知った時から」という起点は、亡くなった日と一致しないこともあります。疎遠だったご親族の場合、しばらく経ってから通知が届いて初めて知る、ということも実際にあります。
また裁判所は、3か月のうちに判断のための資料が得られない場合には、期間伸長の申立てによって期間を伸ばせる場合があると説明しています。借金があるのかどうかも分からないまま日数だけが過ぎていく、というご家族にとっては大切な選択肢です。「間に合わないから諦める」ではなく、「間に合わないかもしれないので早めに相談する」と考えていただければと思います。
知らないうちに「認めた」ことにならないように
民法921条では、相続財産の全部または一部を処分した場合などに、単純承認をしたものとみなされる可能性があるとされています。何が「処分」にあたるのかは、金額や状況によって判断が分かれるところで、葬儀社の私どもが「これなら大丈夫です」と申し上げられる性質のものではありません。だからこそ、迷いが生じた支払いや処分については、実行する前に司法書士や弁護士へご確認いただくことを、はっきりおすすめしています。
すぐ進めてもよいこと、待った方がよいこと
ご家族から実際にご質問の多い項目を、目安として整理しました。個別の事情で結論が変わることもありますので、あくまで相談前の下準備としてお使いください。
| 内容 | 目安 | ひとこと |
|---|---|---|
| 死亡届の提出・火葬許可 | 進めてよい | 期限がある手続きなので最優先 |
| ご遺体の搬送・安置・葬儀 | 進めてよい | 支払い方法だけ後述の点にご注意 |
| 健康保険・年金の資格喪失や停止の届出 | 進めてよい | 受給を止める届出と、給付金の受け取りは別問題 |
| 電気・ガス・水道の使用停止 | おおむね進めやすい | 使用を止めることと未払い分の支払いは別 |
| 公共料金の名義変更 | 状況次第 | その家に誰が住み続けるかで意味が変わる |
| 故人名義の預貯金の払戻し・使用 | 待つ | 相続放棄を考えるなら特に慎重に |
| 自動車・貴金属・家財の売却や廃車 | 待つ | 換価は判断が分かれやすい行為 |
| 形見分け・遺品の持ち帰り | 待つ | 価値のある品は写真と記録だけ残す |
| カード残債・借入・滞納分の支払い | 待つ | 督促が来てもその場で約束しない |
年金の停止や未支給年金の請求は「進めてよい」側に入りますが、未支給年金を誰がどう受け取るかは別の整理が必要です。手順は親が亡くなった後の年金手続きの記事に、葬祭費や埋葬料といった給付金の違いは葬祭費と埋葬料のどちらを申請するかをまとめた記事にまとめています。
クレジットカード・スマホ・公共料金・銀行口座の注意点
クレジットカードは「連絡」と「支払い」を分ける
カード会社へ亡くなった事実を伝えることは、事実の通知です。不正利用や自動更新を止める意味でも、放置しない方が安心です。問題になりやすいのは、その先の未払い代金です。相続人がご自身の判断で故人の残債を支払ってしまうと、後々の話し合いで説明が難しくなることがあります。引き落とし口座が凍結されて延滞扱いになり、督促が強まる場面もありますが、その場で支払いを約束せず、「相続放棄を検討中で、専門家に確認しています」とお伝えするだけでも状況は変わります。年会費やサブスクの請求が続く場合も同様で、止める依頼と支払いは切り分けてください。
スマホは解約・承継・一時停止で意味が違う
携帯電話は、解約するのか、名義を引き継ぐ(承継する)のか、いったん利用を停止するのかで、まったく意味が変わります。承継はご家族が契約上の立場を引き継ぐ形になりますので、相続放棄を考えている段階では慎重になった方がよい選択です。一方で、解約を急ぎすぎると、二段階認証や写真・連絡先の確認ができなくなり、後の手続きで困ることもあります。まずは必要な情報を控え、そのうえで判断する順番をおすすめします。SNSやネット上のアカウントの扱いは故人のSNSアカウントの判断基準をまとめた記事で詳しく触れています。
公共料金は「止める」と「引き継ぐ」を区別する
電気・ガス・水道は、お住まいの片付けや換気のために当面必要なことも多く、すぐには止められません。使用停止の連絡そのものは進めやすい手続きですが、名義変更となると、その家に誰が住み続けるのか、家財をどうするのかという話に直結します。順番の考え方は公共料金・契約名義変更の順番をまとめた記事をご覧ください。なお、支払い方法を故人の口座からご自身の口座に切り替えた場合は、ご自身のお金で立て替えたことになりますので、日付と金額の記録を必ず残しておいてください。
銀行口座は動かす前に確認を
金融機関が口座を凍結するタイミングや、葬儀費用との関係については亡くなった家族の銀行口座はいつ凍結されるかを解説した記事にまとめています。相続放棄を考えている場合に特にご注意いただきたいのは、「凍結される前に引き出しておこう」という発想です。ご家族としては自然な行動でも、後から説明が難しくなる可能性がありますので、引き出しや振替をする前にご相談ください。
自動車と保険、賃貸のお部屋
自動車は、それ自体が財産です。売却や廃車、名義変更は判断が分かれやすい行為ですので、急かされても一度止めてください。自動車保険については、解約に伴う返戻金が生じることがあり、これも扱いに注意が必要です。等級の引き継ぎや、他のご家族が同じ車を運転する場合の補償の空白についても、保険会社に事実を伝えたうえで確認しておくと安心です。
賃貸のお部屋は、管理会社や大家さんから退去と片付けを強く求められがちです。しかし室内の家財を処分することは、相続放棄を検討している方にとって最も慎重になるべき行為のひとつです。家賃を誰が払うのか、ご自身が連帯保証人になっていないかによっても立場が変わります。「相続放棄を検討中なので、専門家に確認するまで室内の物には触れられない」と、早い段階で伝えておくことをおすすめします。故人が自営業やお店をされていた場合は、取引先へのご連絡も別の配慮が必要です。取引先への死亡通知や連絡順の考え方もご参照ください。
葬儀費用と相続放棄を混同しないために
「相続放棄をするなら、お葬式もしてはいけないのでしょうか」というご質問をいただくことがあります。お見送りをすること自体を諦める必要はありません。一般には、社会的に見て相応の範囲の葬儀費用の支出は問題になりにくいと説明されることが多いのですが、ここでも大切なのは「誰のお金で払ったか」です。
故人の預貯金から支払う場合と、喪主の方がご自身の口座から支払う場合とでは、意味合いが変わります。そのため当社では、相続放棄をお考えのご家族には、喪主ご自身の口座からのお支払いと、領収書のお宛名やお支払いの記録を整えておくことをご案内しています。香典の扱いも含め、後から経緯を説明できる形にしておくことが、ご家族を守ります。
費用そのものを抑えたい、規模を小さくしたいというご相談も遠慮なくお伝えください。ご事情に合わせて、無理のない形をご提案します。内容と費用の考え方は大阪セレモニーの家族葬のページにまとめています。
旭区周辺で相談前に整理しておきたいメモ
司法書士や弁護士へご相談される時、次の情報が手元にあると話が早く進みます。逆に言えば、これらを集める段階では、まだ財産に手をつける必要はありません。
- 亡くなった日と、ご家族がその事実を知った日(3か月の起点に関わります)
- お住まいが持ち家か賃貸か、賃貸なら管理会社名と契約者
- 届いている郵便物の種類(督促状、カード明細、税や保険料の通知、金融機関からの封書)
- 通帳・キャッシュカード・クレジットカードの枚数と金融機関名
- 自動車の有無、車検証と保険証券の所在
- 携帯電話の会社と、契約者がどなたになっているか
- 電気・ガス・水道の請求書と支払い方法
- ご自身以外に相続人となりうる方の顔ぶれ
届いた郵便物を確認すること自体は、状況を把握するために必要な作業です。中身を見ることと、その請求に応じて支払うことは別の話だと考えてください。大阪市旭区にお住まいだった場合、役所の手続きは旭区役所が窓口になります。関目高殿・森小路・千林からであれば移動の負担も大きくありませんので、必要書類を一度にそろえられるよう、先に電話で確認しておくと二度手間が防げます。
迷った時は一人で判断しない
相続放棄が関わる場面では、ご家族が「良かれと思ってした行動」が、後から重い意味を持ってしまうことがあります。しかも、そういう時に限って、周囲からは早く片付けるよう急かされます。私どもがお伝えしたいのは、急かされる側にも「今は決められません」と言う権利がある、ということです。
もう一度整理します。お見送りに必要な手続きは進める。故人の財産を使う・処分する行為は止める。そして、判断に迷う支払いや処分は、実行する前に司法書士や弁護士へ確認する。この三つを守っていただければ、選択肢を残したまま次に進めます。
葬儀の内容や日程、そのうえで何から手をつければよいかについては、ご葬儀の事前相談・お問い合わせから遠慮なくお声かけください。まだお葬式をどうするかも決まっていない段階でも構いません。会社の考え方やこれまでのお手伝いについては大阪セレモニー公式サイトをご覧いただければ幸いです。ご家族が落ち着いて判断できる時間をつくることも、葬儀社の役目だと考えています。