「遺産が入れば生活も少し楽になるかな。」そう思った矢先に故人に借金があることが判明。
よくよく調べてみると、”相続すると資産も負債も引き継がなくてはならない”とありました。
そう聞いて途方に暮れる人も実際多いかと思います。
借金の存在は、故人だけでなくあなたや親族の将来に大きな影響を与える可能性があります。
本記事では専門家監修のもと、借金相続の基礎知識から具体的な対処法、相続放棄の手続きや期限についても、実践的なアドバイスをお伝えしていきます。
これを読めば、あなたも借金相続の不安から解放されるでしょう。
目次
借金の相続とは?基礎知識を解説
相続は、プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も対象となることをご存知でしょうか。
借金の相続とは、被相続人(亡くなった方)が抱えていた債務を、相続人が引き継ぐことを指します。
具体的には、
・住宅ローン
・自動車のローン
・銀行からの借り入れ
・消費者金融からの借り入れ
などが該当します。
相続人は原則として、プラスの財産(不動産や預貯金など)とマイナスの財産(借金)を一緒に相続することになります。
ただし、すべての借金が無条件で相続されるわけではありません。
例えば、ギャンブルによる借金や保証人の債務など、一身専属的な債務は相続の対象外となることもあります。
相続される借金の範囲は、被相続人の死亡時点で確定している債務に限定されますし、相続人が負担する借金の額は、相続により取得した財産の価額を超えることはないという制度も存在します。
これは「限定承認」という制度によって保護されている権利です。
相続人が複数いる場合、借金は法定相続分に応じて分割して承継されることになります。
例えば、配偶者と子供2人が相続人の場合、配偶者が2分の1、子供がそれぞれ4分の1ずつの割合で借金を負担することになるのです。
相続開始を知った時点から3カ月以内であれば、相続放棄や限定承認の手続きを行うことが可能ですが、この期間を過ぎてしまうと、原則として相続を単純承認したものとみなされてしまいます。
したがって、被相続人に借金があることが判明した場合は、できるだけ早めに対応を検討する必要があるでしょう。
借金相続のリスクと知っておくべき注意点
借金の相続には、相続人の生活を脅かす深刻なリスクが潜んでいます。
まず第一に、予期せぬ多額の借金により、相続人自身の経済的基盤が揺らぐ可能性があるでしょう。
万が一被相続人の借金の全容を把握できていない場合、想定以上の債務が発覚することもあります。
このような事態を避けるために、被相続人の債務状況を早期に確認しなければなりません。
金融機関からの借り入ればかりに目がいきがちですが、知人からの借金や連帯保証人としての債務なども確認していきましょう。
また、相続人が複数いる場合、借金の分割方法をめぐってトラブルが発生するケースも少なくありません。
法定相続分に従って債務を分割するのが原則ですが、実際の返済能力に差がある場合は調整が必要になることもあります。
さらに、相続を放棄した場合でも、相続財産の処分や管理に関与すると、相続放棄の効力が否定されるリスクもあります。
相続放棄後は、遺産の管理や処分に一切関わらないことが重要です。
借金の存在を知りながら相続放棄の手続きを怠ると、全額の返済義務を負うことになる可能性もあるため、「故人の借金だから」と無視するのは避けましょう。
相続人の中に行方不明者や認知症の方がいる場合、手続きが複雑化する可能性がありますから、面倒でも故人の借金には正面から向き合わなくてはならないのです。
被相続人の死亡後に発見された借金については、相続放棄の申述期間の起算点が異なることにも注意が必要です。
債務の存在を知った時点から改めて3カ月の期間が設定されることになるため、相続開始後、速やかに金融機関や税務署への照会を行い、債務の全容を把握することが賢明です。
このように、借金相続のリスクを軽減するためには、正確な情報収集と適切な判断が不可欠なのです。
相続放棄とは?メリット・デメリットを詳しく解説
相続放棄は、相続人が相続に関するすべての権利を放棄する法的手続きです。
この制度を利用することで、プラスの財産もマイナスの財産も一切相続しないことを選択できます。
相続放棄のメリットとして、まず第一に借金の相続を回避できる点が挙げられるでしょう。
被相続人の債務が資産を上回る場合、相続放棄は有効な選択肢となります。
また、相続に関する煩雑な手続きや権利関係の整理から解放されるというメリットもあります。
特に、被相続人との関係が疎遠だった場合、このメリットは大きな意味をもつでしょう。
一方で、相続放棄にはいくつかの重要なデメリットも存在するのです。
最も大きなデメリットは、プラスの財産も一切相続できなくなること。
つまり、予想以上に価値のある遺産が後から見つかっても、それを相続することはできません。
一度相続放棄をすると撤回することができないという点もデメリットです。
さらに、配偶者が相続放棄をした場合、配偶者居住権を主張できなくなる可能性もあります。
相続放棄は次順位の相続人に効力が及ぶため、家族関係に影響を与える可能性が高いです。
例えば、親の相続を放棄すると、自分の子供が次の相続人となりますから、相続放棄を決断する前に、家族間で十分な話し合いを持つことが推奨されます。
慎重に検討を重ねた上で、最終的な決断を下すべきでしょう。
相続放棄の手続き方法と必要書類
相続放棄の手続きは、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で行います。
手続きには、いくつかの重要な書類が必要です。
まず、相続放棄申述書。
この申述書には、相続人本人の署名と実印の押印が必要になります。
申述書の他に、被相続人の出生から死亡までの経過が分かる戸籍謄本一式が必要になるでしょう。
また以下の書類も準備しなくてはなりません。
・相続人と被相続人の関係を証明する戸籍謄本
・相続人の実印と印鑑証明書
・被相続人の死亡診断書または除籍謄本
これらの書類は、”申述時から3ヶ月以内に発行されたもの”でなければなりません。
申述時には、相続人が必ず出頭することが原則となります。
ただし、正当な理由がある場合は、代理人による申述も認められますが、委任状などの追加書類が必要になります。
手続きの際は、収入印紙と切手を準備することも忘れてはいけません。
家庭裁判所に提出した書類は返却されないため、必ずコピーを保管してください。
申述から約2週間程度で、相続放棄受理証明書が発行されますが、これらは金融機関や債権者との手続きで必要となる重要な書類です。
複数の相続人がいる場合、それぞれが個別に手続きを行う必要があります。
相続放棄の手続きは、法定期限内に確実に完了させましょう。
相続放棄の申述期限と注意点
相続放棄の申述期限は、相続開始を知った日から3ヶ月以内と民法で定められています。
この期限を過ぎてしまうと、原則として相続を「単純承認」したものとみなされます。
ここでいう「相続開始を知った日」とは、
・被相続人の死亡
・自分が相続人であることの両方を知った時点
を指します。
ただし、相続人が未成年者の場合は、法定代理人がこれらの事実を知った日が起算点となります。
期限の計算において、初日は算入されないという点にも注意が必要です。
例えば、4月1日に相続開始を知った場合、7月1日が期限となります。
また、借金の存在を知らずに期限を経過してしまった場合については、特別な救済措置が設けられています。
相続人が相続開始時に存在を知らなかった債務については、その事実を知った時点から新たに3ヶ月の期間が設定されるのです。
この「特別期間」の適用を受けるためには、債務の存在を知らなかったことに正当な理由が必要です。
相続放棄の申述期限は、いかなる理由があっても延長することはできません。(相続人が海外在住の場合でも、原則として3ヶ月の期限は変わりません。)
そのため、期限が迫っている場合は、とりあえず相続放棄の手続きを行うことも検討すべきでしょう。
もし、遠隔地にいることで手続きが困難な場合は、代理人を立てることも可能なのですから、期限内に手続きができない特別な事情がある場合は、早めに家庭裁判所に相談することをお勧めします。
相続放棄後の生活への影響と対策
相続放棄を行った後も、日常生活にはいくつかの影響が及ぶ可能性があります。
まず、被相続人が住んでいた家に居住している場合、相続放棄をするとその不動産に対する権利も放棄することになります。
ただし、賃貸借契約を結んでいた場合は、その契約自体は相続放棄の影響を受けませんから、相続放棄後も賃借人としての権利は保護されます。
また、被相続人の生前の医療費や福祉サービスの利用料についても、注意が必要です。
これらの費用は相続放棄後も、扶養義務者として支払いを求められる可能性がありますが、被相続人が加入していた保険金の受取人に指定されていた場合、その権利は相続放棄の影響を受けないでしょう。
保険金請求権は相続財産とは別個の権利として扱われるためです。
相続放棄後は、被相続人の遺品の処分にも関与できなくなります。
もちろん位牌や写真アルバムなど、財産的価値を持たない個人的な記念品については、相続放棄後も保管することができます。
相続放棄後の生活設計においては、将来の収入や支出を慎重に見積もる必要があるでしょう。
借金の相続に関するまとめ
借金の相続は、適切な対応を取ることで問題を最小限に抑えることが可能です。
まず重要なのは、相続開始を知ってから3ヶ月以内に行動を起こすこと。
この期間内であれば、相続放棄という選択肢を検討することができます。
ただし、相続放棄は一度行うと取り消すことができないため、事情が複雑化するようであれば、専門家への相談を積極的に活用することをお勧めします。
特に、債務の全容が把握できていない場合や、複数の相続人がいる場合は、弁護士などの専門家に相談することが賢明でしょう。
借金相続の問題は、決して一人で抱え込む必要はありません。
適切な情報と専門家のサポートがあれば、必ず解決への道が開けます。