葬儀は、故人に哀悼の意を示しつつ、想い出を遺族と共有しながら送り出す大切な儀式です。
様々な宗教や風習がある中で、正しい行動を心がけることは故人への最後の敬意を表します。
葬儀は結婚式と違い、参列者それぞれの個性を表現する場ではなく、一体感をもって臨むことが大切であるため、マナーや作法が何よりも重んじられるでしょう。
この記事では、葬儀に参列する際の宗教別マナー、基本の喪服選びから香典の相場、そして弔辞のルールまで詳しく解説します。
多様な葬儀の形に触れながら、参列者としての適切な態度を学びましょう。
目次
葬儀参列の基本マナーと注意点をプロが徹底解説!
葬儀に参列することは、故人への最後の敬意を表す大切な行事。
そこには様々なマナーが存在し、宗教や地域によっても異なる場合があります。
例えば、服装では一般的に喪服を着用しますが、その選び方にも注意が必要ですし、香典を包む際にも、相場や包み方について知っておく必要があるでしょう。
また、お焼香の手順や心持ちも葬儀の荘厳な雰囲気を保つためにも意識しなくてはなりません。
こうしたマナーを遵守することで、故人だけでなく、他の参列者や遺族に対しても敬意を表せるのです。
正しい喪服の選び方と着こなしについて解説!
喪服を選ぶ際は、まずその葬儀がどの宗教によるものかを考慮しなければなりません。
一般的には黒色の服装が基本とされていますが、カトリック式の場合は白が適していることもあります。
また、喪服は清潔感があり、シワやたるみがなく、控えめで落ち着いたデザインを選ぶことが重要です。
アクセサリーは最小限にし、時計やメガネは控えめなデザインのものを着用する方が好ましいでしょう。
靴も同様に、ハイヒールや派手な装飾がないものを選びます。
さらに、喪服を着る際は、柄物のネクタイや帯は避け、品位のある着こなしを心がけることが大切です。
こちらの記事で葬儀に最適な喪服を網羅的に解説しています。
→失敗しない喪服選びについて画像で徹底解説!(別記事)
お焼香の正しい進め方
お焼香は葬儀において故人への弔いとして行われる重要な儀式です。
進み方や手順には宗教や宗派による違いが存在しますが、一般的な手順を解説しましょう。
まず香炉の前に進みます。
次に、お焼香の粉を一つまみ取り、両手で持ち、頭を少し下げてから香炉に落とします。
この時、投げるような動作は不適切です。
その後、一度または数回お辞儀をして、静かに元の位置に戻ります。
このときの心持ちも大事で、故人に対する感謝や惜しむ気持ちを込めながら儀式を行うことが求められるでしょう。
正しいお焼香のやり方を動画で解説しています。
→別記事
知っておくべき香典の相場とマナー
香典は故人への弔いとして遺族に贈るものですが、どのような金額を包むべきかは、参列者の立場や故人との関係、地域の風習などによって異なります。
一般的には、友人や同僚であれば5,000円~10,000円、親族であれば15,000円~30,000円程度が相場です。
しかし、これらはあくまでも目安につき、ご自身の裁量で決めましょう。
最近では香典返しの手間を考慮して、香典を受け取らない遺族の方も増えています。
直接遺族に手渡す場合は、気持ちを込めて一言添えて渡すと良いですね。
香典に関するマナーや適正な金額については、こちらで解説しています。
→別記事
仏式葬儀での慎み深い参列方法とは?
仏式葬儀では、その格式や風習を重んじ、故人との最後のお別れを慎み深く行うことが求められます。
葬儀参列者は、葬儀の厳粛な雰囲気を壊さないように、静かに慎ましく行動することが大切です。
全体的に控えめな態度を心掛け、故人との関係や宗教的な背景を尊重しつつ、葬儀に臨まなければなりません。
心得として、仏式の葬儀では、自身の信仰する宗教の教えや習慣をもち込むことなく、あくまで仏教の教えに則った態度で参列してください。
では、仏式の具体的な参列のマナーや心構えについて、以下に解説していきます。
祭壇への進み方及び接近時の作法とは?
ご焼香や献花をする際には、一人ひとり祭壇へ向かいます。
その際にも、一定のマナーがあります。
①祭壇の前に進む際は、静かに礼を尽くし、周囲の参列者に配慮しながら進みます。
②祭壇に到達したら、手をきちんと合わせ、頭を垂れて合掌します。
③祭壇に一礼し、席に戻ります。その際、他の参列者にも一礼します。
一連の流れを動画にしましたのでご覧ください。
(動画)
礼をする際は、心の中で故人に対する感謝や哀悼の意を表すように心掛けましょう。
一連の動作はゆっくりと、そして丁寧に行うことで、心からの敬意を示すことに繋がります。
他の参列者が待っているからといって、決して焦る必要はありません。
故人への最後の別れは、形式にとらわれず、自身の真心が伝わるような接近を心掛けましょう。
精進落としとは?儀式での適切な振る舞い方を紹介
精進落としとは、葬儀での断食を終えるための料理を指し、故人とのお別れを済ませた後に行われる慣習をさします。
食事は生前の故人を偲びながら取りますが、過度に酔っ払ったり、大声で笑ったり、不謹慎な話題は厳禁です。
精進落としは、生きていることへの感謝と、故人を偲ぶことの二つの意味があるため、優しく穏やかな気持ちで語り合いましょう。
この時には、遺族の皆様の気持ちも落ち着いている場合が多いので、様子を見ながら故人との想い出を共有して下さい。
また、主催者側の配慮にも感謝の心を忘れず、積極的にお礼を申し上げることもマナーの一つです。
法要における適切な行動
仏式葬儀の重要な過程として行われる法要には、更に注意深い行動が求められます。
読経が行われる際には、参列者は正座または椅子に座り、手を合わせて静かに拝聴します。
私語は極力控え、周囲の人々の邪魔をしないように心掛けてください。
また、僧侶の指示には素早く対応し、礼儀正しく静粛な態度を保つことが求められます。
法要に臨む際には、故人との心の繋がりを再認識し、生前の思い出を胸に刻みつつ、心からの哀悼を表現することが大切です。
キリスト教式葬儀の事前知識と参列マナー
葬儀に参列する際には、各宗教の背景と儀式の意義を理解することが大切です。
しかし、日本においてキリスト教式の葬儀は、参列者にとって馴染みの薄い要素が多いかもしれません。
一般的にキリスト教の葬儀は「葬儀式」と呼ばれ、故人が信仰していた教会や礼拝堂で行われることが多くあります。
ただし、キリスト教にもプロテスタントとカトリックに宗派が分かれ、それぞれ信仰の内容や死への捉え方、そして葬儀の形式まで異なるため、事前に葬儀の流れやマナーを学んでおくと良いでしょう。
この章では、キリスト教の葬儀におけるマナーや作法について解説します。
告別式での礼拝エチケット
キリスト教式葬儀の告別式に参列する際は、礼拝のエチケットを心得ておく必要があります。
まず、礼拝が始まる前には、静かに会場に入り、指示された場所に着席します。
告別式ではしばしば賛美歌が歌われることがあり、歌詞が配布される場合は進んで参加してください。
賛美歌を知らない場合でも、静かに聞き、礼拝に集中している姿勢を示すことが大切です。
祈りの時間には、他の参列者が祈っている間は頭を垂れて静寂を守ります。
この他にも、礼拝中の立ち振る舞いが求められる場合があるため、事前に進行の概要を知っておくと安心ですね。
キリスト教式の弔辞の特徴
キリスト教式の葬儀では弔辞も大切な役割を果たします。
弔辞は、故人の人生をふりかえり、その歩んだ道に感謝と尊敬の意を表すこと。
キリスト教式で特に重視されるのは、故人の人生が如何に信仰に従い、神の愛の中で生きたかを伝えることです。
弔辞を述べる際には、聖書の言葉を引用しながら故人の信仰心を称える表現が一般的。
”神の御前で平和を享受している”という観点から故人に対する敬意を示すことも、キリスト教式の弔辞には含まれることが多いです。
喪服とアクセサリーの選び方
キリスト教式の葬儀に参列する場合、喪服選びも重要なエチケットの一つとなります。
一般に求められる喪服は、格式を感じさせる控えめなデザインと色調のものが適しており、これは一般的な葬儀とあまり変わりません。
男性はダークスーツに白いシャツ、黒いネクタイが基本で、女性は畏敬の念を表す黒のドレスやスーツを選びます。
また、過度な装飾は避け、派手なアクセサリーや明るい色のものは控えることが一般的なマナーです。
シンプルなブローチや真珠のネックレスなど、控えめなアクセサリーがいいですね。
靴も黒く、できればつや消しのものを選ぶことが好ましいでしょう。
葬儀の喪服選びやキリスト教の宗派については下記の記事を参考にしてください。
→喪服選びの決定版!男女別&子供向けの葬儀服を完全解説!
→カトリック派とプロテスタント派の葬儀の違いとは?
無宗教葬の特徴と適切な参列マナーとは?
無宗教葬は、特定の宗教に則らない葬式の形です。
これは、故人が生前宗教に帰依していなかった場合や、宗教にとらわれない形で送ってほしいという遺志に基づいて選択されます。
神職や僧侶などの宗教者を招かずに執り行われる一方で、故人の人生を偲びつつ、遺族や参列者が想いを共有する時間を重視する点が大きな特徴です。
葬儀の進行は、故人の親族や知人が中心となって企画し、故人へのメッセージを読み上げたり音楽演奏が行われたりと、故人との関係や性格を反映させた内容になることが多いでしょう。
故人と深い絆をもっていた参列者はスピーチをお願いされることもあるため、その際は快く引き受け、故人への感謝や思い出を述べると良いですね。
一般的な無宗教葬の流れ
無宗教葬の流れは、形式に捕らわれない自由なものであるため、様々なケースが考えられます。
しかし、一般的にはまず開式の挨拶から始まり、故人の生前の写真や思い出が映し出される場合が多いです。
その後、遺族や友人、同僚からのスピーチが行われ、故人の偉大さや思い出が語られます。
音楽演奏や詩の朗読など、故人の好きだった芸術を取り入れることもあるでしょう。
最後に閉式の挨拶をもって、式は終了となります。
参列者は、式に沿って静かに故人を偲び、遺族の気持ちを尊重する姿勢を崩さないようにしましょう。
無宗教葬での服装と振る舞い方とは?
参列する無宗教葬において、服装は一般的な葬式と大きく異なることがあります。
従来の喪服を着用する必要はなく、故人との関係性や遺族の意向によって服装の指定がある場合が多いです。
例えば、明るい色の服装や故人が好んでいた色を取り入れることが推奨されることもあります。
振る舞いやマナーにおいては、他の葬儀のスタイルと相違ないでしょう。
故人を穏やかに偲びつつ、厳粛な雰囲気を壊さないよう配慮し、特にスピーチでは故人の人となりや遺族の感情に配慮した言葉選びが大切です。
無宗教の葬儀についてはこちらで詳しく解説しています。
→別記事
弔辞を贈る際のルール
葬儀に参列する際には、遺族に対する弔辞を述べることが一つのマナーとされています。
弔辞を読むことは故人への最後の敬意として、また遺族への哀悼の意を表す重要な役割を果たすため、そのルールや慣習をきちんと理解しなくてはなりません。
日本における弔辞は、一般的には葬儀や告別式で読まれ、故人と特に関係の深かった参列者が読むとされているため、その格式や内容、言葉遣いには細心の配慮が求められます。
また、宗教や地域によって異なる慣習もあるため、事前に弔辞に関する知識を学び、適切なものを準備しておくことが重要でしょう。
弔辞の基本構造と心に響く文言の選び方
弔辞を贈る上で最も大切なのは、故人への感謝と想いをしっかりと伝え、他の参列者とそれらを共有すること。
つまり、弔辞の基本構造をおさえ、心に響くような文言選びが大切になるということですね。
まず、弔辞の構造としては、故人との関係に始まり、故人の功績や思い出、そして哀悼の意を表現する部分に続きます。
コツは、故人との印象的なエピソードを交えつつ、その人らしい性格や行動を伝えることでしょうか。
遺族の感情に寄り添う表現を心がけることが一つ大きなポイントになります。
実際の弔辞で使える具体的な例文を下記ブログで解説していますので、ご確認ください。
→別記事
宗教別弔辞の違いと注意点
宗教によって葬儀の形式や風習は大きく異なり、それに伴い弔辞の内容も変わります。
それぞれの宗教において必ず入れる”枕詞”のような文章がありますので、それらを基礎として弔辞を組むイメージですね。
よって、同じような弔辞を使いまわしていると、不適切な言葉や表現が混ざってしまう可能性があるため、宗教ごとの慣習はしっかりと理解しなくてはなりません。
遺族や他の参列者への配慮を忘れず、故人の宗教観に寄り添った弔辞を贈ることが大切です。
弔辞を述べる際の注意点を3つ解説
弔辞を述べる際の立ち振る舞いや態度は、言葉に込められた想いを伝える上で非常に重要な要素となります。
いくら表面的に綺麗な言葉を並べても、弔辞のマナーを抑えなければ、遺族からの印象は悪くなるでしょう。
まずは、下記に記載の作法をしっかり認識し、イメージを掴んでください。
適切な言葉遣いとトーン
弔辞は故人を偲び、敬意を表すための言葉です。
軽率な発言や不適切なユーモアは避け、真摯で厳粛なトーンを保ちましょう。
また、避けるべき言葉やフレーズとして、直接的な死を連想させる言葉や、縁起が悪いとされる言葉があります。
例えば、「重ね重ね」「再び」「苦しい」などは控え、穏やかで優しい表現を心掛けることが重要です。
時間と構成に配慮する
弔辞は簡潔にまとめることが大切です。
長すぎると他の参列者に負担をかける可能性があり、短すぎると故人に対する敬意が伝わらないことがあります。
一般的には3〜5分程度が適切とされています。
また、弔辞の構成も重要です。
はじめに故人との関係や思い出を述べ、中盤で故人の人柄や功績に触れ、最後に遺族への励ましやお悔やみの言葉で締めくくると良いでしょう。
感情をコントロールする
弔辞を述べる際には、感情のコントロールが求められます。
もちろん、涙や感情の表出は自然なことですが、あまりにも感情的になりすぎると、話の内容が伝わりにくくなったり、参列者に心配をかけたりすることがあります。
事前に弔辞を何度か練習し、自分の感情を整理しておくと良いでしょう。
また、深呼吸をしたり、ゆっくりと話すことで、落ち着きを保ちながら弔辞を述べることができます。
これら3つのポイントを抑えた上で、心を込めて弔辞を贈ることができれば、故人への最後の別れとしても、遺族への温かい慰めとしてもその役割を果たすことでしょう。
葬儀後の過ごし方とタブー
葬儀を終えた後は、心身ともに抜け殻のような気分になることがあります。
しかし社会的な慣習やマナーとして、特定の行動をとることが望まれる場合もありますし、タブーとされることもあります。
喪に服す期間中は、故人を偲ぶ心持ちを大切にしながら、日常生活に戻していく必要がありますし、葬儀の参列者は遺族との接し方にも配慮する必要があるでしょう。
ここでは、故人を失った悲哀と向き合いつつ、徐々に心の平穏を取り戻していくための葬儀後の過ごし方や、避けるべき行動についてご案内いたします。
葬儀後の身の回りの整理と感謝の気持ち
葬儀が終わった後の重要なタスクは、故人の物品や遺品の整理です。
遺品の一つ一つには故人の思い出が詰まっていますが、やはり深い悲しみが心を覆っていると、遺品整理をすること自体に負担がかかります。
できれば家族や親族で分担し、故人の意志を尊重しながら丁寧に取り組むことが大切です。
また、葬儀に参列してくれた方々や、支えてくれた人たちへのお礼の表明も忘れてはなりません。
挨拶状を送る、直接訪問して感謝の意を伝えるなど、心を込めたお礼の形を考えましょう。
法事でのふるまいとマナー
法事とは、葬儀後に行われる追善(ついぜん)のための儀式であり、故人を偲び、追悼する重要な行事です。
これに参加する際は、葬儀と同じく、礼儀正しく控えめな態度を心がけること。
宗教的な作法や読経に耳を傾ける姿勢を示し、故人との縁を偲ぶ時間を大切に過ごしましょう。
また、法事の後には精進落としとして食事が提供されることが多いですが、このときもマナーを守り、過度な酒量や話題を避け、周囲の人々と心静かに時を過ごします。
避けるべき行動と言葉遣い
葬儀後、喪に服する間は、派手な行動や言動を自粛するのが一般的です。
特に遊興目的の娯楽や、騒がしい集まりは避けるべきとされています。
言葉遣いにおいても、軽はずみな冗談や俗っぽい話題は慎むべきでしょう。
故人を偲び、その死を尊重する表れとして、世俗的なものから一定期間距離を置き、心の整理をすることが大切です。
亡くなった方を敬い、残された人たちとの絆を大切にするためにも、こんなふとした配慮が求められるのです。
葬儀に参列する際のマナーや注意点に関するまとめ
葬儀は故人を送る最後の儀式であるため、故人の人生においてたった一度しかありません。
よって、失敗は許されず、遺族や参列者が一体感をもって送り出す必要があります。
それを成し得るのがマナーや作法。
葬儀の場において個性やユーモアなどは不要で、目立った行為をしてしまうと、それだけで葬儀の雰囲気を壊してしまうでしょう。
また、宗教毎にマナーも少しずつ違うので、できるならある程度の情報や知識は身に付けておきたいですね。
故人を荘厳な雰囲気で送り出すためにも、また社会人の一般常識を学ぶ観点からも、葬儀における礼儀はぜひ学んでおいてください。