葬儀という場は、故人様への最後のお別れを告げるとともに、残されたご遺族様に寄り添い、悲しみを分かち合うための大切な儀式です。
私たちは日常生活の中で、突然の訃報に接することがあります。
そうした際、どのような服装で伺えば良いのか、香典の金額はいくらが適切なのか、あるいは宗教ごとの作法はどう違うのかといった不安を感じることは少なくありません。
また、お葬式は結婚式などのお祝い事とは異なり、参列者一人ひとりの個性を出す場ではなく、全体が一体感を持って厳かに行われるべきもの。
そのため、基本的なマナーやしきたりを身につけておくことは、社会人としての常識であるだけでなく、故人様やご遺族様に対する最大の敬意へと繋がります。
この記事では、葬儀に参列する際の宗教別マナーや基本の喪服選び、香典の相場から弔辞の書き方に至るまで、プロの視点から詳しくお伝えしていきます。
目次
葬儀に参列する際の基本的な姿勢と心がけたいこと
お葬式に参列するにあたって最も大切なのは、形だけの作法をなぞることではなく、故人様を悼む真心です。
しかし、その心が形として現れるのがマナーですから、まずは全体の雰囲気を壊さないような振る舞いを意識しましょう。
会場に到着した際は、まず受付で静かに一礼し、お悔やみの言葉を述べることが最初の一歩となります。
「この度は、誠にご愁傷様でございます。」といった言葉を、控えめなトーンで伝えるのが一般的です。
また、久しぶりに会う知人や親戚がいたとしても、大きな声で談笑したり、笑顔で挨拶したりするのは厳禁。
あくまでも静寂を保ち、ご遺族様の心情を第一に考えた立ち振る舞いを心がけてください。
スマートフォンの電源を切るかマナーモードに設定することも必要です。
失敗しない喪服の選び方と身だしなみのチェックポイント
葬儀の席で、周囲と浮かないための第一関門が服装の選定です。
喪服には格式の違いがありますが、一般の参列者であれば準喪服と呼ばれるブラックスーツやブラックフォーマルを着用するのが基本。
最近では「平服でお越しください。」と案内されることもありますが、これは普段着という意味ではなく、略喪服を指していることが多いのです。
男性の服装マナー:黒を基調とした慎み深い装い
男性の場合は、光沢のない黒のスーツに、白い無地のワイシャツ、そして黒いネクタイを合わせるのが正解です。
ネクタイピンは使用せず、ベルトや靴、靴下もすべて黒で統一するのが、慎み深い装いのポイント。
靴は金具のついていないシンプルなデザインのものを選び、エナメル素材のような光るものは避けるべきでしょう。
また、冬場のコートなどは会場の入り口で脱ぐのがマナーですから、クロークに預けるか、手に持って入場してください。
女性の服装マナー:露出を控えた落ち着いたデザイン
女性の場合は、黒のワンピースやアンサンブル、あるいはスーツを選び、露出を極力控えるようにしましょう。
スカートの丈は膝が隠れるものを選び、ストッキングも黒の薄手のものを着用するのが一般的です。
アクセサリーは結婚指輪以外は外すのが基本ですが、ネックレスを付けるなら一連の真珠であれば問題ありません。
二連のネックレスは「不幸が重なる」ことを連想させるため、葬儀の場では避けるのが鉄則。
髪型も耳より下の位置で一つにまとめるなど、清潔感のある落ち着いたスタイルを意識しましょう。
子供や学生の服装はどうすべき?
学生の場合は、学校の制服が正式な喪服となります。
制服の色が黒でなくても、それが正装であれば失礼には当たりませんので安心してください。
制服がない小さなお子様の場合は、黒や紺、グレーといった落ち着いた色の服を選んであげましょう。
キャラクターものや派手な色の服は避け、靴もスニーカーではなくなるべくシンプルなものを用意してください。
お焼香の正しい手順と宗教別の回数について
仏式の葬儀において、最も重要な儀式の一つがお焼香です。
これは、仏様や故人様に対してお香を焚き、心身を清めるという意味を持っています。
手順自体はそれほど難しくありませんが、宗派によって回数が異なるため、事前に把握しておくとスムーズです。
基本的なお焼香の進め方
まず順番が来たら、次の人に軽く目礼をしてから焼香台の前に進みます。
ご遺影に向かって一礼し、右手の親指、人差し指、中指の三本で抹香をつまみましょう。
そのまま額の高さまで捧げる動作を「戴く(いただく)」と言いますが、これを行う回数も宗派によります。
その後、静かに香炉の中に抹香を落とし、最後に合掌して一礼し、自席に戻るのが一連の流れです。
代表的な宗派による回数の違い
例えば浄土真宗本願寺派では、お香を戴かずに1回だけくべます。
一方、真言宗や曹洞宗では、3回行うのが一般的とされているのをご存知でしょうか?
もし自分の宗派が分からなかったり、周囲の様子が見えなかったりする場合は、1回から3回の間で行えば失礼には当たりません。
大切なのは回数そのものよりも、故人様を慈しむ気持ちであることを忘れないでください。
香典の相場と包み方のマナーを徹底解説
香典は故人様への供養の気持ちであるとともに、急な出費が続くご遺族様への相互扶助という意味合いもあります。
金額の多寡で評価が決まるわけではありませんが、一般的な相場を知っておくことは社会人のたしなみ。
ここでは、関係性に応じた金額の目安と、不祝儀袋の書き方について整理していきましょう。
相手との関係性による金額の目安
一般的な友人や知人の場合は、5,000円から10,000円が相場となります。
職場の同僚や上司であっても、同じくらいの金額を包むのが一般的でしょう。
親族の場合は関係が深くなるため、10,000円から30,000円、あるいはそれ以上の金額になることもあります。
ただし、4や9といった数字が含まれる金額は避けるのがマナー。
また、お札の枚数も奇数にするのが望ましいとされていますので、注意して準備しましょう。
不祝儀袋(香典袋)の書き方と注意点
仏式の葬儀では、表書きに「御香典。」や「御霊前。」と書くのが一般的です。
ただし、浄土真宗では「御仏前。」と書くのが正式なマナーであることを覚えておくと安心。
名前を書く際は、薄墨(うすずみ)の筆ペンを使用するのが基本です。
これは「涙で墨が薄まった。」「急なことで墨を十分に磨れなかった。」という悲しみの深さを表しているからですね。
裏面や中袋には、必ず住所と氏名、および金額を明記して、ご遺族様が後で整理しやすいように配慮しましょう。
キリスト教式葬儀への参列で知っておきたい作法
日本では仏式の葬儀が多いですが、キリスト教式の式に招かれることもあります。
キリスト教では死を「天国への門出。」と捉えるため、仏式とは用語や儀式の内容が大きく異なります。
献花(けんか)の正しいやり方
キリスト教式ではお焼香の代わりに、花を供える献花が行われます。
順番が来たら係の人から花を両手で受け取り、花が右側に、茎が左側に来るように持ちましょう。
祭壇の前で一礼し、時計回りに90度回転させて、根元が祭壇側に向くようにして献花台に置きます。
最後に、黙祷を捧げるか一礼をしてから席に戻ります。
言葉遣いにも注意が必要
キリスト教式の葬儀では、「ご愁傷様です。」や「成仏してください。」といった言葉は使用しません。
代わりに「安らかな眠りをお祈りいたします。」や「神様のお慰めがありますように。」といった表現を用います。
死を悲劇ではなく神のもとへ帰ることと考える、宗教的な背景を尊重することが大切です。
無宗教葬や「お別れの会」での参列マナー
最近では、特定の宗教形式にこだわらない無宗教葬や、後日行われる「お別れの会」も増えています。
こうした場では、服装の指定が「平服」となっていることが多いため、悩んでしまいますよね?
平服指定の場合のベストな服装
お別れの会での平服とは、ジーンズやTシャツのようなカジュアルウェアではありません。
男性ならダークスーツ、女性なら落ち着いた色のワンピースやスーツを選ぶのが正解です。
あくまでも故人様を偲ぶ場であることを忘れず、華美な装飾は避けるようにしましょう。
献灯やメッセージの記入など多様な形式
無宗教葬では、キャンドルに火を灯す献灯や、メッセージカードへの記入が儀式に含まれることがあります。
形式が自由だからこそ、その場の進行や案内に従って、柔軟に対応する姿勢が求められます。
故人様が好きだった音楽が流れたり、映像が上映されたりすることもありますので、心穏やかにその時間を共有してください。
弔辞を頼まれた際の書き方と述べる時の心得
もし故人様との縁が深く、弔辞を頼まれたとしたら、それは大変名誉なことであり、最後の大きな務めです。
弔辞はご遺族様にとっても大きな慰めとなりますから、誠意を持って準備を進めましょう。
弔辞の構成と心に響くエピソードの選び方
まず、故人様への呼びかけから始め、その人柄が伝わる具体的なエピソードを盛り込みます。
「あの時、〇〇さんがかけてくれた一言に救われました。」といった実体験は、何よりも参列者の心に響くものです。
最後に、残されたご遺族様への励ましと、故人様への永遠の別れの言葉で締めくくります。
長さは3分から5分程度、文字数にして1,000文字前後を目安にまとめると聞きやすいでしょう。
忌み言葉(いみことば)に注意する
弔辞を執筆する際に絶対に避けなければならないのが、忌み言葉です。
「重ね重ね。」「たびたび。」といった重ね言葉は、不幸が繰り返されることを連想させるため使用しません。
また、仏式であれば「迷う。」といった言葉を避け、キリスト教式であれば「冥福。」という言葉を使わないなど、宗教ごとのタブーも確認しておきましょう。
事前に何度か音読して練習し、当日は感情が込み上げてもゆっくりと丁寧に話すことを心がけてください。
葬儀が終わった後の過ごし方とタブー
葬儀が無事に終了した後も、参列者としてのマナーは続きます。
ご遺族様は心身ともに疲れ切っていますから、葬儀直後の長居や頻繁な連絡は避けるべきでしょう。
香典返しを受け取った際の対応
忌明け(四十九日後)に香典返しが届いた場合、お礼状を出す必要はありません。
「お礼を言うことで、不幸を繰り返さない。」という考え方があるためですが、どうしても無事に届いたことを伝えたいなら、電話や短いメッセージで済ませるのがスマート。
喪中期間の配慮と接し方
ご遺族様が喪に服している期間は、お正月のお祝い事や結婚式の招待などは慎重になるべきです。
特に最初の1年間は、お祝いの言葉をかけるのを控え、静かに見守る姿勢が大切。
季節の挨拶状である年賀状も、先方から喪中欠礼が届いたら、こちらからも送らないのがマナーですよね。
仏式葬儀での慎み深い参列方法とは?
仏式葬儀では、その格式や風習を重んじ、故人様との最後のお別れを慎み深く行うことが求められます。
葬儀参列者は、葬儀の厳粛な雰囲気を壊さないように、静かに慎ましく行動することが大切です。
全体的に控えめな態度を心掛け、故人様との関係や宗教的な背景を尊重しつつ、葬儀に臨まなければなりません。
心得として、仏式の葬儀では、自身の信仰する宗教の教えや習慣をもち込むことなく、あくまで仏教の教えに則った態度で参列してください。
では、仏式の具体的な参列のマナーや心覚えについて、以下に解説していきます。
祭壇への進み方および接近時の作法とは?
ご焼香や献花をする際には、一人ひとり祭壇へ向かいます。
その際にも、一定のマナーがあります。
まず祭壇の前に進む際は、静かに礼を尽くし、周囲の参列者に配慮しながら進みましょう。
祭壇に到達したら、手をきちんと合わせ、頭を垂れて合掌します。
次に祭壇に一礼し、席に戻りますが、その際、他の参列者にも一礼してください。
一連の動作はゆっくりと、そして丁寧に行うことで、心からの敬意を示すことに繋がります。
他の参列者が待っているからといって、決して焦る必要はありません。
故人様への最後の別れは、形式にとらわれず、自身の真心が伝わるような接近を心掛けましょう。
精進落としでの適切な振る舞い方
精進落としとは、葬儀での断食を終えるための料理を指し、故人様とお別れを済ませた後に行われる慣習です。
食事は生前の故人様を偲びながら取りますが、過度に酔っ払ったり、大声で笑ったり、不謹慎な話題は厳禁です。
精進落としは、生きていることへの感謝と、故人様を偲ぶことの二つの意味があるため、優しく穏やかな気持ちで語り合いましょう。
遺族の皆様の気持ちも落ち着いている場合が多いので、様子を見ながら故人様との想い出を共有して下さい。
主催者側の配慮にも感謝の心を忘れず、積極的にお礼を申し上げることもマナーの一つ。
法要における適切な行動
仏式葬儀の重要な過程として行われる法要には、更に注意深い行動が求められます。
読経が行われる際には、参列者は正座または椅子に座り、手を合わせて静かに拝聴しましょう。
私語は極力控え、周囲の人々の邪魔をしないように心掛けてください。
僧侶の指示には素早く対応し、礼儀正しく静粛な態度を保つことが求められます。
法要に臨む際には、故人様との心の繋がりを再認識し、生前の思い出を胸に刻みつつ、心からの哀悼を表現することが大切です。
葬儀の参列マナーや注意点に関するまとめ
葬儀は故人様を送る最後の儀式であるため、その方の人生においてたった一度しかありません。
よって、失敗は許されず、遺族や参列者が一体感をもって送り出す必要があります。
それを成し得るのがマナーや作法なのです。
葬儀の場において個性やユーモアなどは不要で、目立った行為をしてしまうと、それだけで葬儀の雰囲気を壊してしまうでしょう。
また、宗教毎にマナーも少しずつ違うので、できるならある程度の情報や知識は身に付けておきたいですね。
故人様を荘厳な雰囲気で送り出すためにも、また社会人の一般常識を学ぶ観点からも、葬儀における礼儀はぜひ学んでおいてください。
代表:山田泰平による葬儀コラム連載中!
https://mbp-japan.com/osaka/osakaceremony/column/