配偶者との死別後、様々な問題に直面される方も少なくないでしょう。
特に、生前に離婚の話し合いを進めていた場合や、事実上の離婚状態にあった場合は、死亡後離婚という選択肢を選ぶ可能性もあります。
しかし親族への理解や複雑な手続きなど、ややこしい側面をもつのは事実で、具体的にどのような手順を踏むべきなのか分からない人も多いと思います。
本記事では、死亡後離婚に関する基礎知識から実践的なアドバイスまで解説しますので、ぜひ最後まで熟読ください。
目次
死亡後離婚とは何か?基礎知識と手続きの特徴
死亡後離婚は、配偶者が亡くなった後に行う離婚手続きを指します。
一般的な離婚とは異なり、故人との婚姻関係を解消する特殊な手続きとなりますが、この手続きは民法第764条に基づいて行われます。
生前に離婚調停や離婚訴訟が進行中だった場合には、相続人の同意のもとで手続きを継続することができるのです。
死亡後離婚の特徴として、通常の離婚と比べて手続きがより複雑になることが特徴です。
特に重要なのは、故人の相続人全員の同意が必要となる点。
相続人が複数いる場合、全員の合意を得る必要があることから、事前の話し合いが極めて重要となっていきます。
また、死亡後離婚は期限が設けられており、配偶者の死亡を知った日から6ヶ月以内に申立てを行う必要があります。
この期限を過ぎてしまうと、もう手続きを行う事はできません。
死亡後離婚の効果として、婚姻関係が遡って解消されることにあります。
これにより相続権が消滅し、死亡した配偶者の遺産を相続することができなくなってしまうのです。
ただし、すでに相続した財産については、原則として返還する必要はありません。
このように死亡後離婚は通常の離婚とは異なる特殊な性質を持っているため、慎重な判断が必要となるのです。
死亡後離婚が必要なケースと実施までの流れ
死亡後離婚が必要となるケースには、いくつかのパターンが存在します。
最も多いのは、生前に既に別居状態で事実上の離婚状態にあったケースでしょう。
また、配偶者の死亡直前に離婚調停や訴訟を進めていた場合にも、この手続きが必要となってまいります。
DV(ドメスティック・バイオレンス)や経済的虐待があった場合も、死亡後離婚を検討する理由の一つとなりますね。
具体的な手続きの流れとしては、まず必要書類の収集から始めます。
・戸籍謄本
・除籍謄本
・死亡診断書
などの基本的な書類を準備しましょう。
次に、故人の相続人全員の同意を得るための準備を進めていきます。
この際、相続人の範囲を正確に把握してください。
相続人全員の同意が得られたら、家庭裁判所に対して死後離婚の調停を申し立てることになります。
調停では、離婚の理由や必要性について丁寧に説明する必要があります。
調停が成立すると離婚の効果が発生し、婚姻関係が解消されることとなります。
ただし、調停が不成立となった場合は、訴訟に移行することもできます。
このような流れを踏まえ、ベストな選択としては専門家のサポートを受けること。
失敗のリスクを著しく下げ、納得のいく結果になりやすいです。
死亡後離婚にかかる具体的な費用
死亡後離婚に関する費用は、大きく分けて裁判所に納める費用と弁護士費用の二つとなります。
裁判所に納める費用として、まず調停申立費用が1,200円必要となってきます。
これに加えて、郵便切手代として数千円程度を準備する必要があるでしょう。
弁護士に依頼する場合は、着手金として20万円から30万円程度が一般的です。
さらに事案が複雑な場合は、追加の費用が発生する可能性もあります。
また成功報酬として、解決時に追加で20万円程度が必要となることも珍しくありません。
書類の取得費用としては、戸籍謄本や除籍謄本の取得に1通につき450円程度かかってきます。
必要な書類の数によっては、数千円から1万円程度でしょうか。
また、相続人が遠方に住んでいる場合は、交通費や宿泊費などの実費も考慮する必要があります。
このように、死亡後離婚にかかる総費用は、50万円前後となることが一般的です。
ただし、事案の複雑さや相続人の数によって、この金額は大きく変動する可能性があることを覚えておきましょう。
場合によっては、法テラスなどの法的支援制度を利用できる可能性もあります。
遺族が直面する一般的な問題点
死亡後離婚を進める過程では、様々な問題に直面することがあります。
最も深刻な問題の一つが、相続人全員の同意を得ることの難しさでしょう。
特に、故人の親族との関係が良好でない場合、同意を得るのが困難となることが多いです。
また、すでに相続手続きが進んでいる場合、その処理との調整が複雑になってまいります。
相続財産の分割方法や、すでに取得した財産の扱いについて、慎重な検討が必要となりますが、それぞれの感情面での問題も無視できず、故人との思い出や家族との関係に悩む方も少なくありません。
また、期限内に手続きを完了させることへのプレッシャーも大きな問題となることがあります。
6ヶ月という期限は、様々な問題に対処しながら進めるには決して長くないのです。
さらに、手続きの過程で新たな書類や証拠が必要となることもあるため、このような予期せぬ事態に備えて、早めの準備と対応が重要となってきます。
以上の問題に加えて、経済的な負担も大きな課題となることが多く、やはり専門家のサポートが必要不可欠となるでしょう。
問題解決のための具体的な対策
問題解決の第一歩として、まず信頼できる専門家に相談することをお勧めします。
弁護士や司法書士などの法律の専門家を仲介役とすることで、手続きや離婚までのスケジューリングがスムーズになりますし、相続を受けた親族も積極的に話し合いに臨んでくれます。
また予期せぬ事態に備えて、重要書類はコピーを取って保管し、相続人との連絡手段は電話ではなくメールやSNSなどの記録に残る形で行うことが望ましいですね。
後々のトラブル防止のため、話し合いの内容も必ず記録として残しておく必要があります。
精神的なストレスに対しては、カウンセリングなどの専門家のサポートを受けることも有効ですし、経済的な負担に関しては前述した通り、法テラスの活用を検討しましょう。
このような具体的な対策を講じることで、より円滑な手続きが可能となってまいります。
何より、一人で抱え込まず、周囲のサポートを積極的に活用することが大切なのです。
死亡後離婚に関する支援制度とサポート
死亡後離婚を進める上で、様々な支援制度やサポート体制が整備されています。
まず、法テラスでは法律相談や弁護士費用の立て替えなどのサービスを提供していますし、収入が一定基準以下の方は、無料で法律相談を受けることができるでしょう。
また各地の弁護士会でも、初回相談を安価で受けられる制度を設けておりますし、市区町村の法律相談窓口では、基本的な相談を無料で受けることができる場合が多いのです。
さらに女性センターなどでは、女性のための法律相談を実施していることもありますね。
経済的な支援としては、日本司法支援センターによる立替制度も利用可能です。
さらに民間の法律相談サービスでは、オンラインでの相談も受け付けているところが増えてまいりました。
各種支援制度の利用に際しては、事前に資格要件の確認が必要となってくるでしょう。
相談窓口によっては、予約が必要な場合もありますし、無料相談には時間制限がある場合が多いので、事前に調べておきましょう。
このように様々な支援制度を上手に活用することで、経済的・精神的な負担を軽減できるのです。
死亡後離婚に関するまとめ
死亡後離婚は通常の離婚よりも手続きや手順がややこしく、基本的には弁護士や司法書士などの専門家のサポートを受ける事が望ましいでしょう。
死亡後離婚は、配偶者の死亡を知った日から6ヶ月以内という期限が設けられており、また相続人全員の同意が必要となってきます。
手続きの費用は、調停申立費用や弁護士費用など、合計で50万円前後が一般的となりますが、経済的な負担が大きいと感じるならば、法テラスなどの支援制度を利用するのも良いですね。
6ヶ月以内という短い期間だからこそ、突発的なトラブルにも対処できるよう迅速に手続きを進めてください。